2019年09月03日

第一回 KLab Expert Camp「TCP/IPプロトコルスタック自作開発」を開催しました

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KLab Expert Camp というイベントを8/26〜29の4日間で開催しました。

KLab Expert Camp とは

KLab Expert Camp は、技術的に深いテーマに取り組んでいる学生の発掘・育成を目的とした KLab の新しい取り組みです。
記念すべき第1回のテーマは「TCP/IPプロトコルスタック自作開発」で、以下のような触れ込みで開催しました。

「OSを作ってみたい」「コンパイラを作ってみたい」と思う人が多いように「プロトコルスタックを作ってみたい」と思う人も多いのではないでしょうか。今回の KLab Expert Camp のテーマは、そんな皆さんにピッタリの「TCP/IPプロトコルスタック自作開発」です。担当講師が開発している教育用のプロトコルスタック(https://github.com/pandax381/microps)を教材に、Ethernetフレームを組み立てて送受信するところから ARP、IP、ICMP、UDP、TCP などのプロトコルを全て自分の手で実装することで、これまでブラックボックスだったプロトコルスタックの処理を紐解いていきます。

参加にあたっては、開発環境やプログラミング言語に関する初歩的な知識は身につけていることを期待していますが、期間中は KLab の講師陣が手厚くサポートしますのでご安心下さい。また、意欲的な参加者においては、期間中に追加機能の実装や組み込み機器への移植などへのチャレンジングな取り組みも支援します。

また、参加者には各自の取り組みたい内容に応じて2つのコースの何れかを選択してもらう形をとりました。

【基本コース】 教材となるリファレンス実装の解説を通じてプロトコルスタックそのものへの理解を深める

【応用コース】 リファレンス実装の別言語への移植や機能追加など各自がテーマを決めて取り組む

開催の経緯

定期的にこんなツイートをしながら、年に1〜2人のペースで前途有望な学生を低レイヤ沼に引きずり込んでるんですけど、たまたま5人くらいの学生が同じタイミングでリアクションしてくれまして。それだけの反響があるのは嬉しいものの、個別に対応してあげるのはおじさんの体力的にちょっと厳しそうだなという感じもあって「もういっそのこと全員集めて一緒にやればいいのでは???」という考えに至ったわけです。

そして、インターン関連をとりまとめている人事の担当者に「こんな感じで何人か集めてやりたいんだけど」と雑に話をしたところ「イイっすね!なんならもう少し集めてイベントにしちゃいます???」みたいな凄いノリの良い返事をもらって、1週間くらい経ったら「例のイベントの企画、Go出ました!」と、あっさり開催が決まってしまった感じです。

取り急ぎ告知に向けてイベントの名称を決めようということになったのですが、これが結構難しくて... パッと思いつくものはだいたい既に他で使われてるんですよね。Expert Camp は僕の出した案なんですけど「Expert...ちょっとイキりすぎでは...?」みたいな意見もあったりして。最終的には「カッコ良さそうだからいいじゃん」「僕(自称)エキスパートだから無問題」という感じで落ち着きました。

そんなこんなで漕ぎ着けたイベント告知が以下のツイートです。

万人に向けたイベントでもないし、SNSを通じてニッチな層に届けばいいやくらいの軽い気持ちだったので、イベントの告知は僕の個人アカウントによる上記のツイートのみです。 この時点ではマジでどのくらい集まるのか未知数で「追加で数名集まったらわいわい楽しくできそうだけど、果たして応募してくれる人はいるのだろうか...」と不安な気持ちでいっぱいでした。

そんな不安をよそに、つよつよの学生達や「拙者、この分野は素人でござるが」みたいなこと言い出しそうな強い大人の方々にもRTされ、それなりに拡散されることになりました。面白そう!と反応してくれたみなさん、本当にありがとうございました。

そして、いざ蓋を開けてみると総勢20名以上の学生がエントリーしてくれ、最終的に13名の参加者が決まりました。 募集しておいてなんですが「世にはプロトコルスタックを自作したい学生がそんなにいるのか...」と正直びっくりしましたね。

(多数エントリーいただいて嬉しかった一方で、運営のリソース的に希望者全員を受け入れることができず、参加者を絞らなければならなかった点はすごく心残りです。残念ながら今回は参加できなかった方も次回の開催につなげることができたらその際はまたエントリーして欲しいなと思います)

開催までの準備

告知から開催まではちょうど4ヶ月くらいあったので、そのあいだに人事の担当者と細かなことを決めつつ準備を進めていきました。といっても、僕が雑に「あれやりたい」「これやりたい」と言ったものを、イベント慣れしている人事の担当者がよしなにアレンジして的確に落とし込んでくれるという連携プレーで進めていきました。だいぶ無茶振りもしたと思うのに、いい感じでまとめてくれて本当にありがとうございました。

以下は個人的に気に入っていて満足しているポイントです。

  • 参加者と運営メンバー全員分のIDカード(プラスチック製)
  • お昼のお弁当
  • 最終日に授与した修了証
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どれも過去に自分が参加したり運営に携わったイベントで「これ良かったなぁ」「嬉しかったなぁ」と印象に残っていたものを盛り込んでもらいました。 参加者からのアンケートでも「お弁当おいしかった!」とか「記念に残るものがもらえて嬉しかった!」とか、それなりに喜んでもらえていたようで、すごく嬉しいです。

あとは、教材として使う予定の「リファレンス実装」をもう少し理解しやすい作りに改良したり、解説用の資料を作ったりと、なかなか忙しくギリギリまで準備を進めていました。

イベント期間中の様子

運営スタッフや参加者が以下のハッシュタグを付けてツイートしてくれているので、これらのタイムラインを追ってもらうと、どんな雰囲気で開催されていたのか分かる思います。(ごはんのツイートが多いので飯テロ注意)

#KLabExpertCamp

#プロトコルスタック自作

開催してみて

まず、これだけの人数の参加者に集まってもらえたことが驚きと共に一番うれしかったです。そして、皆さん起床ミッションに失敗することもなく初日から最終日まで黙々と開発に取り組んでくれていたのが本当に凄いと思いました。

あと、このイベントを開催した目的のうちの1つでもあるんですけど、参加者同士の交流が活発に行われていたようで良かったです!尊い。いや、これまで個別にインターン生として受け入れていた学生達とのやり取りの中で「ニッチな分野になるとなかなか周りで同じレベル感で話せる友達や仲間がいなくて寂しい(とくに地方の場合)」という話が上がることが多かったんですよ。なので、今回のイベントでは全国各地から同じニッチな分野に興味を持っている学生が集まる絶好の機会だし、そういった交流の場としても機能して欲しいなと思っていたのでした。

このイベントに参加して「TCP/IPを完全に理解した」となった方、その先に進んで「TCP/IPまるでわからん」となった方「TCP/IPチョットデキル」の域に達した方、得られたものはそれぞれ異なると思いますが、参加者全員に「楽しかった」と思ってもらえていたら開催した甲斐があったかなと思うし、第2回はもっとクオリティ高くヤルぞ!という気持ちになります。

謝辞

もともとこのイベントは僕が一人で講師を務めるつもりで企画がスタートしたのですが、予想を上回る参加人数となったことから、社内のエンジニアに協力を仰いで講師やサポート役を引き受けてもらいました。

また、社内からだけではなく外部の方にも講師役を引き受けて頂きました。

ねりさんはプロトコルスタック自作クラスタとして以前から認識していて、#tcfm のミートアップでのLTやサイボウズ・ラボユースでの活躍を見て「ヤバイ人がいる」とウォッチしていたのですが、こんな雑な絡み(なんとこれが初コンタクトなんですよ)にも関わらず、快く引き受けていただき本当にありがとうございました。

僕はR&D部門に所属しているものの、学問として研究をしたことがないため、研究者の立場として参加者に対してアドバイスや相談に対応してくれていたのはものすごく心強かったし、めちゃくちゃカッコいいなと感じました。

他にも、めんどくさい細々としたタスクを含めキッチリこなしてくれた人事の担当者や、仕事の合間にIDカードのデザインを引き受けてくれたデザイナーさんなど運営に関わってくれたみなさん、ほんとうにありがとうございました!

参加者のブログ記事

最後に、観測できている範囲で参加してくれたみなさんが書いてくれたブログ記事へのリンクを貼っておきます。

TCP/IP プロトコルスタックを自作した - kawasin73のブログ

KLab Expert Campに参加したよ。 - よくきたわね、いらっしゃい

KLab Expert Camp に参加しました - veqcc’s diary

KLab Expert Camp にチューターとして参加した - Around The Computer

KLab Expert Campに参加してきました - teru_0x01.log

KLab Expert Campに参加した - 抹茶うまい

第1回 KLab Expert Campに行ってきました(TCP/IPプロトコルスタック自作インターン) - 迫真の氷結晶

pandax381 at 18:23│Comments(0)network | 開発

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