2007年02月23日
パソコン1台ではじめるロードバランサ体験
昨日書いたの通り,記事を寄稿したWEB+DB PRESS Vol.37が,今日発売になりました.それを記念して(?),記事の内容が簡単に実験できるパッケージを公開します.
これは,VMWareを使って,だれでも直ぐにロードバランサの実験を始められるパッケージになっています.何台もマシンを集めたり,Linux をインストールする必要は一切ありません.無償配布されているVMWare Playerがあれば,いつでもどこでも実験ができます.
これは,VMWareを使って,だれでも直ぐにロードバランサの実験を始められるパッケージになっています.何台もマシンを集めたり,Linux をインストールする必要は一切ありません.無償配布されているVMWare Playerがあれば,いつでもどこでも実験ができます.
もちろん,このブログで去年の夏に公開した4つのエントリ
- こんなに簡単! Linuxでロードバランサ (1)
- こんなに簡単! Linuxでロードバランサ (2)
- こんなに簡単! Linuxでロードバランサ (3)
- 高トラフィックに対応できるLinuxロードバランサを目指して〜LVSをNATからDSRへ
ダウンロードはこちらからどうぞ(75MB程です).
使い方は,ダウンロードしたパッケージに付属の ReadMe.txt をご覧下さい.また,同じ内容を以下に引用しておきます.
■■ この負荷分散実験パッケージについて ■■ これは,手軽にいつでもどこでも LVS による負荷分散実験ができるパッケージです.DSAS blog で 2006年の8〜9月に掲載された4つの記事(※1)の実験と,WEB+DB PRESS Vol.37(http://www.gihyo.co.jp/magazines/wdpress/archive/Vol37)の特集2の記事の実験ができるようにデザインされています. ※1 ・こんなに簡単! Linuxでロードバランサ (1) (http://dsas.blog.klab.org/archives/50664843.html) ・こんなに簡単! Linuxでロードバランサ (2) (http://dsas.blog.klab.org/archives/50665382.html) ・こんなに簡単! Linuxでロードバランサ (3) (http://dsas.blog.klab.org/archives/50675098.html) ・高トラフィックに対応できるLinuxロードバランサを目指して 〜 LVSをNATからDSRへ (http://dsas.blog.klab.org/archives/50678999.html) 実験に必要なものは全て,1つの VMWare のディスクイメージに納められています.ですので,VMWare Player がインストールされている環境でしたら,いつでもどこでも LVS を試すことができます. 負荷分散実験をしようと考えた場合,物理的あるいは論理的なマシンが最低3台(LVSを動かす負荷分散機が1台と,負荷分散対象となる Web サーバが2台)必要になります.今回のパッケージでは,LVS マシンは VMWare で動作します.Web サーバは VMWare の中でさらに UML(User Mode Linux) を使って仮想環境を作り,その中で動作します. これを使えば,単純な LVS による負荷分散実験をするためには,VMWare Playerを一つ起動すればよく,この場合に必要なリソースは約300MBのディスク容量と,256MBのメモリのみです.(VMware Player をインストールするためのディスク容量は,これとは別に必要になります).VRRPを使った LVS の冗長化実験をする場合でも,2つのVMWare Playerを起動すれば実験でき,この場合は約600MB程度のディスクと384MBのメモリが必要になります(理想的には,VRRP実験の場合なら,3つの VMWare Playerを起動した方がわかりやすいかと思います). 実験用の環境にインストールされている OS は Debian です.LVS や VRRP の動作に必要な ipvsadm コマンドや keepalived デーモン,そして LVS 用のカーネルも全て Debian のパッケージを使っています.例外は UML 用のカーネルと(KLab謹製の)補助スクリプト類のみです.UML 用のカーネルは vanila カーネルのソースからコンパイルしており,また補助スクリプト類のライセンスも GPL としますので,今回の配布物は全て再配布可能になっています. ■■ 配布物 ■■ 本パッケージに含まれるファイル/ディレクトリ構成は,以下のようになっています. ├lv1/ ││ │├─LVS.vmdk │└─lv1.vmx │ ├lv2/ ││ │└─lv2.vmx │ ├cl01+WebServers/ ││ │└─cl01+WebServers.vmx │ ├lv1+WebServers/ ││ │└─lv1+WebServers.vmx │ ├lv2+WebServers/ ││ │└─lv2+WebServers.vmx │ ├cl01/ ││ │└─cl01.vmx │ └OnlyWebServers/ │ └─OnlyWebServers.vmx 各フォルダの名前は,後述する VMWare 起動時の選択メニューの名前と対応しています.フォルダに含まれている各 .vmx ファイルは,起動する OS 環境のコンフィギュレーションに合わせてパラメータを調整しています.しかしながら,VMWare のディスクイメージは各環境に共通になっています."lv1" 以外の環境を起動する場合は,lv1 フォルダにある LVS.vmdk のファイルを,起動したい環境のフォルダにコピーして起動してください. ■■ 起動と終了 ■■ ●VMWare VMWare Player がインストールされてなければ,http://www.vmware.com/ja/products/player/ からダウンロードしてインストールしてください. ○起動できる環境の種類 前述の通り,今回のパッケージで起動できる環境の種類は,次の7種類あります. (1) lv1 (2) lv2 (3) cl01+WebServers (4) lv1+WebServers (5) lv2+WebServers (6) cl01 (7) OnlyWebServers WebServers と付いている環境(3, 4, 5, 7)では,UML による Web サーバが3台(w100, w101, w102)起動します.LVS 用の環境は1, 2, 4, 5 になります.LVS の負荷分散実験のみ行う場合は lv1 を起動します.keepalived による VRRP の実験を行う場合は,lv1 と lv2 両方を起動する必要があります.cl01 はクライアント用の環境です. 起動したい環境用の .vmx を(lv1\LVS.vmdk をコピーしてから)ダブルクリックすると,VMWare Player が起動します.LVS.vmdk をコピーした後最初に起動する場合,ダイアログが開いて UUID を作り直すか尋ねられますので,"Create" を選択して OK ボタンを押してください. ○Linux の起動の方法 VMWare Player を起動するとまもなくブートローダである GRUB のメニューが表示されます.起動したい環境を上下キーで選択してリターンキーを押せば,Linux が起動します.(VMWare Player の中でキーボード操作をするには,まず VMWare Player の画面をクリックします.VMWare Playerからフォーカスを外すには Ctrl キーと Alt キーを同時に押します.ただし Linux の起動がある程度進むまで,VMWare Player からフォーカスを外さないでください.早い段階で外すと Linux がキーボードを認識できずに,起動後のキー入力ができなくなります.) ○終了の方法と注意点 VMWare Player を終了するには,Linux のコンソール上で /sbin/halt コマンドを実行してください.しばらく待てば Linux が終了し,同時に VMWare Player も終了します.終了後まれにロックファイルが残ってしまって,次回起動できなくなることがあります.その場合,LVS.vmdk と .vmx ファイル *以外* を手で削除して下さい. ●Web サーバ 3, 4, 5, 7 の環境で起動すれば,自動的に UML による Web サーバが3台分起動します.VMWare Player 上で動作する Linux が終了するときには,Web サーバも一緒に終了するので,特段明示的に終了させる必要はありません. ○個別に Webサーバを終了する 個々の Web サーバを終了させたい場合は,普通にログインしてシャットダウンするか,或いは UML の制御用のスクリプトを使って,VMWare Player 上の Linux 環境から終了させる事ができます. 制御スクリプトを使って,例えば w101 を終了させるには /etc/init.d/uml_servers stop w101 とします.w101 を指定しない場合,起動している全ての Web サーバを終了します. ○個別に Web サーバを起動する 終了させた Web サーバを起動するには,同様にスクリプトを使って /etc/init.d/uml_servers start w101 などのようにします. ■■ ログイン ■■ ●VMWare 環境へのコンソールログイン ○ユーザとパスワード VMWare Player で起動した Linux にログインするには,普通のマシンにログインするのと同様, ロンプロンプトにユーザ名とパスワードを入力してログインします.ログインできるユーザは root のみで,パスワードは設定されていません.ですのでログインプロンプトに root と入力すれば直ぐに使えます. ○仮想端末 Alt キーとファンクションキー(F1 〜 F3)のどれかのキーを同時に押すことで,仮想端末を切り替えることができます.VMWare 環境の Linux 用の仮想端末は F1 〜 F3 上で動作しています.ですので,Alt-F1, Alt-F2, Alt-F3 で表示される3つの仮想端末で,同時に並行してログインすることができます. ●キーボード環境 起動直後は,キーボード環境が英語モードになっています.日本語モードにするには,ログイン直後に /root/change_keymap jp とします.また,Ctrl キーと Caps Lock キーを入れ替えるには /root/change_keymap swapCC とします. 一度実行すれば設定は保存されますので,次回起動時からは実行する必要はありません. ●Web サーバへのログイン ○ユーザとパスワード VMWare Player の Linux と同様,Web サーバの Linux にログインするにも,root アカウントを使います.パスワードはこちらも設定されていません. ○仮想端末 w100,w101,w102 の仮想端末はそれぞれ,VMWare Player 上の Linux の仮想端末の,F4〜6,F7〜9,F10〜12に割り付けられています.つまり,Alt-F4,Alt-F5,Alt-F6 で w100 のログイン画面に,Alt-F7,Alt-F8,Alt-F9 で w100 のログイン画面に,Alt-F10,Alt-F11,Alt-F12 で w100 のログイン画面に切り替えられます. ●ssh ログイン ネットワークの設定を整えれば,VMWare を動かしているマシンから実験環境へ ssh を使ってログインできます.但し ssh ログインするために設定を変更した場合,環境によっては今まで使えていたネットワークが使えなくなることがあります(その場合でも,設定を元に戻せば,再び使えるようになるはずです).以下の設定をするときは,この点に留意してから変更してください. ○VMWare Playerを Windows で動かしている場合 Administrator 権限を持つユーザで,次の操作をします.(以下の用語は Windows XP の場合のものです.Windows 2000の場合,少し事情が違うかもしれません.) 1) コントロールパネル → ネットワーク接続 を開きます 2) 「VMware Network Adapter VMnet1」を探して右クリックし,「プロパティ」を選択します 3) 一覧から「インターネットプロトコル(TCP/IP)を選択し,「プロパティ」ボタンをクリックします. 4) 表示されたパネルの一番下にある「詳細設定」ボタンをクリックします. 5) 「IP 設定」タブの「追加」ボタンを押します. 6) 表示されたパネルに,以下の値を入力します IPアドレス: 192.168.31.1 サブネットマスク: 255.255.255.0 7) 開いた各パネルの「OK」ボタンを,パネルを開いたのと逆の順序でクリックしていきます. 以上で,ssh ログインできるようになります.Windows 用の ssh のクライアントは PuTTY(http://www.chiark.greenend.org.uk/~sgtatham/putty/) 等があります.PuTTY の使い方などは前述のサイトなどをご覧下さい. ○VMWare Player を Linux で動かしている場合 root ユーザで,以下のコマンドを実行します ifconfig vmnet1:1 192.168.31.1 ○ログイン先マシンとアドレス 実験環境用の DNS サービスは動作していませんので,ssh ログインするにはログイン先を IP アドレスで指定する必要があります.マシン名とアドレスの対応は,次のようになっています lv1: 192.168.31.11 lv2: 192.168.31.12 cl01: 192.168.31.200 wbs: 192.168.31.201 w100: 192.168.31.100 w101: 192.168.31.101 w102: 192.168.31.102 wbs は,(7)の環境用です. w100 〜 w102 へのログインは,はじめちょっと時間がかかります.気長に待ってあげてください. ■■ 実験 ■■ ●クライアントを選択する 実験を進める前に,まずはクライアント環境にどれを使うかを決めます.選択肢は a) VMWare Player を動かすマシンをクライアントとして使う b) クライアント用の VMWare Playerを起動する の2つがあります. ○クライアント用の VMWare Playerを起動する場合 b) の場合は,負荷分散機用の VMWare Player とは別に,クライアント用の VMWare Player を起動するだけです. ○VMWare Player を動かすマシンをクライアントとして使う場合 a) の場合は,(ssh ログイン用に弄ったのとは別に)ネットワークの設定を変更する必要があります.ただしこの変更すると,場合によっては既存のネットワークの利用に悪影響がでる可能性がありますので,その点ご留意下さい. 変更手順は同じで,次のようにします. ・VMWare Player を Windows で動かしている場合 Administrator 権限を持つユーザで,次の操作をします.(以下の用語は Windows XP の場合のものです.Windows 2000の場合,少し事情が違うかもしれません.) 1) コントロールパネル → ネットワーク接続 を開きます 2) 「VMware Network Adapter VMnet8」を探して右クリックし,「プロパティ」を選択します 3) 一覧から「インターネットプロトコル(TCP/IP)を選択し,「プロパティ」ボタンをクリックします. 4) 表示されたパネルの一番下にある「詳細設定」ボタンをクリックします. 5) 「IP 設定」タブの「追加」ボタンを押します. 6) 表示されたパネルに,以下の値を入力します IPアドレス: 10.10.31.200 サブネットマスク: 255.255.255.0 7) 開いた各パネルの「OK」ボタンを,パネルを開いたのと逆の順序でクリックしていきます. ・VMWare Player を Linux で動かしている場合 root ユーザで,以下のコマンドを実行します ifconfig vmnet8:1 10.10.31.200 ・WEB+DB PRESS Vol.37 の記事の実験をする場合 WEB+DB PRESS Vol.37 の記事の実験をする場合は,ここで説明した設定以外にデフォルトゲートウェイの設定が必要になります. クライアントが Windows の場合は,IP アドレスを追加したのと同じパネルにある,デフォルトゲートウェイの追加ボタンから,デフォルトゲートウェイを追加します. 1) 「追加」ボタンを押します 2) 表示されたパネルに,以下の値を入力します ゲートウェイ: 記事に指定された値を入力してください(2章と3章で異なります) メトリック: 1 (「自動メトリック」のチェックを外すと入力できます) ※デフォルトゲートウェイを変更した場合,インターネットなどの外部のネットワークへアクセスできなくなってしまいます.実験の終了後は,必ずこの設定を削除してください.(Linux の場合,デフォルトゲートウェイを削除するには,上記のコマンドのオプションの add を del に変更して実行してください.) ●起動するべき環境 ○LVS 実験の場合 (1) + (3) の2つか,(4) を起動します. ○VRRP 実験の場合 (1) + (2) + (3) の3つか,(1) + (5) の2つを起動します.ネットワークケーブルの挿抜実験をする場合は,(1) + (2) + (3) の3つを起動してください. ●クライアントからのパケットを tcpdump で観察する場合 WEB+DB PRESS Vol.37 の記事では,クライアントマシンのアドレスは 10.10.31.100 になっていますが,本パッケージでは 10.10.31.200 にしています.tcpdump でクライアントからのパケットを観察する場合は,記事で指定されているアドレスを適宜読み替えてください. ●cl01 と web サーバのデフォルトゲートウェイ VRRP の実験をするときには,デフォルトゲートウェイを変更する必要があります.これには ・cl01 の場合 route del default gw 10.10.31.11 route add default gw 10.10.31.10 ・Web サーバの場合 route del default gw 192.168.31.11 route add default gw 192.168.31.10 とします. ●実験で用いるファイル 幾つか記事の記述と異なっている点がありますので,以下に説明します ○keepalived ブログの記事では ipvsadm や keepalived を手動でインストールしていましたが,この環境では Debian のパッケージがインストールされています.ですので,幾つかファイルのある場所が異なっています. /usr/klab/sbin/keepalived → /usr/sbin/keepalived /usr/klab/etc/keepalived.conf → /etc/keepalived/keepalived.conf ○Webサーバの DocumentRoot Web サーバには apache がインストールされ,動作しています.DocumentRoot は /var/www になります.幾つかのテスト用の HTML と CGI ファイルが既に用意されています. ○apache の制御 /etc/init.d/apache2 を使って下さい. ○keepalived.conf /etc/keepalived/blog および /etc/keepalived/Web+DB の下に,記事の中で出てきた設定ファイルが置いてあります.実験時に参考にしてください. (blog/ の下にある設定ファイルでは,sory server が 192.168.31.100 になっています.これは blog の記事中では 192.168.31.11 になっていましたが,今回の環境では負荷分散机上では apache が動作していないために,変更してあります.) ●ネットワークケーブルの挿抜実験 VRRP の実験で,lv1, lv2 のネットワークケーブルの挿抜実験がありますが,仮想環境では物理的なケーブルはありません.ネットワークケーブルを抜く代わりに,コマンドを使ってインタフェースをダウンさせてしまいます.ダウンさせるには,次のコマンドを実行してください. ifdown eth0 ※この実験をするときは,lv1,lv2 に ssh でログインするのではなく,VMWare Player のコンソールから直接ログインしてください. ■■ 最後に ■■ ●Windows 上で VMWare Player を動かす場合の時間の遅れについて Windows 上の VMWare Player で今回の環境を動かしていると,時間が次第にずれていきます.解決策は幾つかあるようですが,今回は実験用環境なので,実害は特に無いと考え,対策はとっていません. ●VMWare Player以外の VMWare の製品での実行 おそらく問題なく動作すると思いますが,確認していませんし,確認のしようもありません. ●お約束 このパッケージの使用,この説明書の内容および各記事の内容は一切無保証です.説明に従って操作した結果意図しないことが起きた場合でも,KLab(株)は責任を負いかねます. それでは,負荷分散環境を心ゆくまでお楽しみ下さいませ(^^ ------------------------------------------------------------------------------------ http://www.klab.org/ (C)KLab Inc. since 2007 http://dsas.blog.klab.org/
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