2019年10月08日

電子工作での AC 給電制御と米国製「IoT Relay」のこと

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マイコンを使っていると AC 100V で稼働する機器への給電を制御したくなることがあります。このブログにも以前、秋月電子通商様によるソリッドステートリレー(SSR)キットを使ってそれを試みた内容を含む記事を掲載しました。

SSR にはわずかな電流で制御できる手軽さがあり、機械式のリレーには絶縁性等での優位性があります。また、単品の機械式リレーをマイコンで取り回す際の手かずは必要な要素がまとめて実装されたリレーモジュールを利用することで省略できます。 このあたりの話題はネットを検索すると様々な実例とともに紹介されています。ただ、私自身はこういったものを「自作」するたびに一抹の不安を感じていました。上の 4年前の記事には次のように書いています。

個人的にはこのように高電圧を扱うものは本当はあまり自作したくないです。その方面に素養がなくても部品を揃えれば作るのは簡単ですが、「手作りの楽しさ」などよりも安全性がもっとも重要ですから、手頃な価格で堅牢な完成品を入手できるならそれを使いたいというのが正直なところです。残念ながら今のところそういう商品は見当たらないようですが(需要はあると思うのですが・・)、 :

こういった事情により単純なトリガー信号を送るだけで所定の機器への給電を取り回してくれるブラックボックス的な完成品をひとつの理想形としてイメージしていたのですが、すでにそういう製品が登場していることを最近知りました。Kickstarter 発の「IoT Relay」という米国の製品です。これはまさに上記のような需要に対応する内容で構成された "リレーの堅牢なラッパー" です。現物の写真を以下に示します。

残念ながら今のところ IoT Relay は日本の PSE 認定を受けておらず国内では販売されていません。個人的な好奇心から先日この製品を調達し手元で試してみました。今回はそのレポートです。

ちなみに、所定の機器への給電にはこうしたローカルなリレー類を取り回すばかりではなく、近年手頃になったスマートプラグを利用する選択もあります。ただし、スマートプラグにはインターネット接続環境が必須であることに加え、目の前にある機器を扱う際にも「遠回り」の結果として生じる微妙な反応の遅れに違和感を覚えるケースもあります。一方、スマートプラグには遠隔地の機器への給電制御にも対応できる大きなメリットがあります。そのため、両者は適材適所で使い分けるべきでしょう。

IoT Relay について

1. 概要

Kickstarter 上のプロジェクトページ

SparkFun での販売ページ

  • IoT Power Relay - www.sparkfun.com US $26.95
    Do you want to control a standard wall outlet device with your microcontroller, but don’t want to mess with the high-voltage wiring? The IoT Power Relay is a controllable power relay equipped with four outputs that help you create an Internet of Things project with safe, reliable power control. With the IoT Power Relay you can easily control the power going to a device with an Arduino, Raspberry Pi or other single-board computer or microcontroller. It provides an alternative to the Power Switch Tail.

    The IoT Power Relay is designed to allow you to safely control an outlet device that operates at 3--48VDC or 12--120VAC. Each IoT Power Relay features a single input (from the included C13 power cable) to four outputs: one normally on, one always on, and two normally off.   :
    みらい翻訳 結果
    マイクロコントローラで標準的なコンセントデバイスを制御したいが、高電圧配線には手を出したくないと思うだろうか?IoT Power Relayは4つの出力を備えた制御可能なパワーリレーで、安全で信頼性の高い電源制御を備えたIoTプロジェクトの構築に役立ちます。IoT Power Relayを使えば、ArduinoやRaspberry Piなどのシングルボードコンピュータやマイクロコントローラを使って、デバイスへの電力供給を簡単に制御できる。電源スイッチテールの代わりに使用できます。

    IoT Power Relayは、DC3~48Vまたは12~120VACで動作するコンセントデバイスを安全に制御できるように設計されています。各IoT Power Relayには、単一の入力(付属のC13電源ケーブルから)から四つの出力があります。一つは通常オン、一つは常時オン、二つは通常オフです。  :

Amazon.com での販売ページ ("does not ship to Japan.")

2. 発注 〜 到着

手元で IoT Relay の存在を知った 2019年7月の時点では SparkFun をはじめ主だったディストリビュータのサイトにおいても Amazon.com においてもことごとく在庫切れの状態だった。製造終了の可能性も想像しつつ SparkFun へ入荷通知をリクエストしておいたところ 2019-09-05 に下のメールが届いた。
本体の販売価格は既知のとおり 米 $26.95 であり、とりあえず購入手続きを進めてみると日本への送料は最安の「Economy(1-4 Weeks)」で $12.02 とのこと。微妙に悩ましい金額だがしばらく考えた末に PayPal 経由で $38.97 を支払った。

2019-09-06 にニュージャージー州ニューアークから発送され 2019-09-19 に自宅の郵便受けに届いた。スペックは外箱に記載されており説明書の類は付属しない。現物を見れば使い方がわかるように工夫されている。

(クリックで可視大縦表示)

(本体に印字された謎マーク:後述)

3. 動作の様子

以下の動画には IoT Relay のよっつのプラグ差込口それぞれに LED ライトを装着し ESP32 ボードから High, Low のトリガー信号を送って反応をみた様子を収めている。

動画: 35秒

4. 試用を通じてのメモ

  • IoT Relay は自分が期待していたものにきわめて近い製品
  • よっつの差込口からの給電を個別のトリガーで制御可能とするオプションがあればより有用かも
  • 差込口がひとつだけのシンプルなバージョンも望まれる
  • 製品の安全性を示す指標としては本体にそれと思しき "SAFETY CPI TESTED", "computer performance inc QC pass" と書かれたマークがあるが、手元で情報を探した範囲では今のところこれらの実体は判然としない

    関連して米アマゾンにはこういう Q&A も。上の事情は米国人にとっても「?」な様子。
    • Amazon.com: Customer Questions & Answers
      Is this unit UL listed?

      Showing 1-2 of 2 answers

      • I can't say for sure, but there is no UL markings on the unit. There is 2 markings: "Safety CPI Tested" and "computer performance inc QC pass"
      • Not yet.
    同じくレビュー欄より。
    • Hackable hardware - www.amazon.com
      This is a well designed and constructed product, but be aware that it is not yet UL listed. My only suggestion for improvement would be to add holes or tabs for secure mounting.   :
    UL について
    • UL (安全機関) - Wikipedia
      UL LLC(英語: Underwriters Laboratories以下UL)は、アメリカ合衆国イリノイ州ノースブルックに本拠を構え、試験、検査および認証を行う企業。認証企業として、世界10位前後の規模を持つ。  :

5. 個人的な所感

今回ピックアップした IoT Relay は世界中の Maker の潜在的な需要のひとつを的確に反映した良い製品だと思います。ただし、利用者への安全性の提供を最大のアピールポイントとする一方で、現時点においてこの製品自体の米本国内での一般的な安全基準への適合状況が判然としない状況にはいささか自己矛盾の感もあり、その点がマイナスイメージにつながりかねない懸念もあります。今後その方面の整備が適切に行われればこの製品は IoT, スマートホームの波に乗りよりメジャーな存在になり得るかもしれません。特定の製品が目立つ形で成功を収めれば同等(あるいはそれ以上)の機能を持つ製品がより低価格で登場しジャンル化して普及の広がるケースは多々あり、そうした流れがいずれ PSE 認定製品の出現につながる可能性も想定されます。そういった期待を含め、この製品の今後の動向には随時目を向けていきたいと考えています。


(tanabe)
klab_gijutsu2 at 07:09│Comments(0)IoT 

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このブログでは、そんな DSAS で使っている技術の紹介や、実験してみた結果の報告、トラブルに巻き込まれた時の経験談など、広く深く、色々な話題を織りまぜて紹介していきたいと思います。
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