2017年12月25日

外部向け HTTP 通信の再送検知ツールを作った話

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このエントリは KLab Advent Calendar 2017 の最終日の記事です。

こんにちは。インフラ担当 高橋です。

このエントリでは、つい先日、少し変わった仕組みの外部向け HTTP 通信の 3way ハンドシェイクの再送検知ツールを作りましたのでご紹介します。

きっかけ

このツールを作ったのは、DSAS の外部で発生するネットワーク障害を検知できるようにするためです。

例えばこのような障害がありました。

DSAS は複数のデータセンタで稼働しているのですが、ある日、特定データセンタの Web サーバから外部 API への接続が重くなる事象が発生しました。

原因は外部ネットワークからの DDoS 攻撃により、データセンタのネットワークの一部区間が飽和状態になったことによるものでした。

外部ネットワーク障害 その1

またある日は、特定のデータセンタの Web サーバから外部の特定 API に接続ができなくなりました。

原因は外部ネットワークの途中経路の ISP で伝送装置が故障したことで、経路変動が発生し、通信が不安定になったことによるものでした。

外部ネットワーク障害 その2

このように DSAS 外部で発生するネットワーク障害の原因は様々であり、対応も状況によって都度変化します。DSAS 内のネットワーク、データセンタの回線、その先の途中経路、外部 API のサーバなど、切り分けしなければならない箇所は多くあります。

特に途中経路の障害というのは、データセンタの回線や外部 API には問題が発生しておらず、障害箇所の切り分けにも時間がかかります。

このような障害はサービスへの影響に直結するため、インフラ担当はできるだけ早く障害に気づき、対応を開始しなければなりません。

そのため、インフラ担当が DSAS 外部で発生するネットワーク障害を検知できる仕組みを導入することにしました。

どのようにして検知するか

障害を検知するには、障害が発生しそうな箇所を想定し、そこを監視する必要があります。

DSAS 内部とは異なり、DSAS 外部で発生するネットワーク障害の原因は千差万別で、且つ監視できる箇所は限られてきます。

何を検知するか

まずは、先ほど例に挙げた障害を振り返ってみることにします。

このような障害の場合、DSAS のサーバやスイッチは正常なためアラートは発生しません。案件担当からの「外部 API の応答が遅い、もしくはタイムアウトしてエラーになる」といった問い合わせがきっかけで障害に気づくことになります。

つまり、外部 API への HTTP 接続の応答が遅くなったり、タイムアウトが発生していることをきっかけに障害を検知しているということになります。

それでは、外部 API への HTTP 接続の応答時間が長ければネットワーク障害が発生しているかというと、外部 API の処理に時間がかかっている可能性もあり、そうとは言い切れません。

このような障害が発生すると、インフラ担当は モニタリングシステム (Ganglia) のグラフを確認します。

グラフには HTTP の外向きの通信についての項目があり、該当時刻に Web サーバで SYN パケットの再送が大量に記録されていました。

HTTP 通信の SYN パケットの再送が起きているということは、外部 API に SYN パケットが届かなかったり、外部 API からの SYN/ACK パケットが Web サーバに届かなかったりしている可能性が高いです。

これを監視すれば DSAS 外部のネットワーク障害を検知できそうです。

何を使って検知するか

直接、監視サーバから外部への HTTP 監視を行うには、ヘルスチェックのような監視用 URL が必要になりますが、インフラ担当では用意することができませんので、案件担当と連携して監視対象 URL のリストを作成し、管理しなければなりません。

DSAS では複数案件のサービスが稼働しており、その全ての案件のリストを管理するのは大変ですので、それは避けたいという思いがありました。

それに加えて今回は、HTTP 接続の応答時間やステータスコードではなく、SYN パケットの再送を監視する必要があります。

「監視対象 URL を管理せずに、外部向け HTTP 通信の SYN パケットの再送を検知したい」

この要望を叶えることのできるツールが、意外と身近にあることに気づきました。

モニタリングシステムのグラフ作成に使用している tcpeek です。

tcpeek とは

tcpeek は KLab が作成した 3way ハンドシェイク時に発生するエラーを監視・集計するネットワークモニタで、エラー検出、再送検出、フィルタ、データ出力といった機能を備えています。

GitHub - pandax381/tcpeek: TCP 3way-handshake monitor

こちらのエントリに詳細が書いてあります。

ログからは見えてこない高負荷サイトのボトルネック

再送検出

指定したインタフェースを監視し、タイムアウト時間内に SYN の再送が発生すると SYN Segment Duplicate (dupsyn)、接続先から SYN/ACK が再送されてくると S/A Segment Duplicate (dupsynack) がカウントされます。

タイムアウト時にも再送は発生していますが、tcpeek の再送検出は 3way ハンドシェイク成功時に再送が発生していればカウントされるようになっています。

想定される原因としては、途中経路の帯域の輻輳やパケ落ちなどが挙げられます。

エラー検出

指定したインタフェースを監視し、RST パケットを受け取ると Connection Rejected (reject)、ICMP Destination Unreachable パケットを受け取ると ICMP Unreachable (unreach)、接続がタイムアウトすると Connection Timed Out (timeout) がカウントされます。

タイムアウトについては、アプリケーションによりタイムアウトまでの時間は異なりますので、tcpeek 起動時に指定するタイムアウト時間 (デフォルト 60秒) を超えたセッションは Connection Timed Out としてカウントされるようになっています。

想定される原因としては、接続先の TCP リセット、途中経路のルーティングテーブルの消失、接続先の無応答などが挙げられます。

tcpeek を使った SYN パケット再送検知の仕組み

tcpeek を使えば外部向け HTTP 通信に絞った 3way ハンドシェイクの再送発生 (dupsyn / dupsynack) や接続失敗 (reject / unreach / timeout) の計測値を取得することができますので、そのカウントが増えたらインフラ担当に通知するツールを作成することにしました。

====== TCPEEK SUMMARY ======
----------------------------
 http-out
----------------------------
 success
     total           17457
     dupsyn              3
     dupsynack           0
 failure
     total             113
     reject             39
     unreach            45
     timeout            29
============================

tcpeek は Web サーバで動作しますので計測値は Web サーバで取得することになります。

Web サーバから直接インフラ担当に通知する仕組みだと、多数の Web サーバで HTTP の再送が発生すると通知の数が大量になってしまいます。

そのため、Web サーバの計測値をキャッシュに格納して集約し、検知ツールでキャッシュにある統計情報をチェックする仕組みにしました。

監視の仕組み

計測値のカウントが増えており、その数がしきい値を超えていると slack とメールでインフラ担当に通知します。こちらは slack への通知例です。

slack通知

おわりに

今回、このツールを作る際に一番悩んだのが、通知内容としきい値の設定方法でした。

Web サーバ単位でカウントを通知すると、台数が多いと通知が縦に長くなってしまい、特に slack では扱いづらくなるため、案件単位で通知をまとめるようにしました。

また、Web サーバ毎にしきい値を設定すると、特定の接続先の障害で再送などが発生した場合、何台の Web サーバで再送が発生しているのか状況を把握しづらくなるため、案件の Web サーバ全台の合計カウント数をしきい値としています。

この 2点はまだまだ改善の余地があると思っており、これからもブラッシュアップしていきたいです。

もちろん tcpeek は外部向け HTTP 通信だけではなく、様々な通信のフィルタを作成し集計できますので、他の通信に対してもこの検知の仕組みは適用できます。

takahashi_yo at 12:48│Comments(0)network | 開発

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このブログについて
DSASとは、KLab が構築し運用しているコンテンツサービス用のLinuxベースのインフラです。現在5ヶ所のデータセンタにて構築し、運用していますが、我々はDSASをより使いやすく、より安全に、そしてより省力で運用できることを目指して、日々改良に勤しんでいます。
このブログでは、そんな DSAS で使っている技術の紹介や、実験してみた結果の報告、トラブルに巻き込まれた時の経験談など、広く深く、色々な話題を織りまぜて紹介していきたいと思います。
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