音を利用する 1
はじめに
技術・インフラの進化とともに情報通信の効率が加速を続ける状況にあって、「音」を利用した往年の通信手法が近年あらためて注目されています。関連する話題をいくつか以下にピックアップしてみます。これらはいずれも最新の技術や文化に密着した要件での応用という点で共通しており、懐古的なモチーフとはまったく無縁であることが興味深く感じられます。
(※各引用文中の青字表示は筆者によるものです)
- お買い物体験をあたらしく
(株式会社スポットライト様サイトより)スポットライトの技術
(1) 位置検出技術
独自の超音波技術により、Andorid/iOS双方に対応した、正確でセキュアな来店検知が実現できます - 『SSC』Smart Sonic Communication 超音波通信のご案内
(ドリームニュース様サイトより: 2012-06-20)SINGAPORE SDI PTE LTD(本社:シンガポール)は、超音波を利用した機器間通信技術として『SSC(Smart Sonic Communication)』を開発いたしました。 iPhone、Androidなどのスマートフォンはもとより、マイクとスピーカーを備えている機器であれば特別なハードウェアを追加することなく、ソフトウェアの導入のみで通信が可能です。
- 店舗にチェックインすればポイントが貯まる「楽天チェック」はO2Oの本命となるか
(TechCrunch Japan 様サイトより: 2014-04-02)超音波を利用した来店検知ポイントアプリ「スマポ」を提供するスポットライト。 2013年10月に楽天が買収して完全子会社となった同社が、4月2日より楽天と連携した来店ポイントアプリ「楽天チェック」の提供を開始した。
- 楽天チェック - 来店でポイントが貯まる!お得な無料アプリ!
(Google Play ストア上の株式会社スポットライト様によるアプリケーション説明より: 当記事時点での更新日付表示は 2017-04-23)1.楽天チェックでポイントが貯まるお店を探す
2.好きなお店や気になったお店に行く
3.お店に着いたらアプリに記載された指定のエリアでボタンをタップするだけ! - LINEの「友だち追加」で超音波が使用可能に!ネタかと思ったらほんとに出来た!
(「デジさる」様サイトより: 2015-09-06)LINEを起動して左下の「その他」から「友だち追加」をタップします。
「QRコード」をタップします。
するとQRコードリーダーが起動します。友だち追加をする一方はこの状態で待機します。
もう一方は、「自分のQRコードを表示」をタップしてQRコードを画面に出します。
すると音量がこの時だけ大きくなります。人間の耳には聞こえませんがこの時既に超音波が出ているようです。 - Radon - Share using Ultrasound
(Google Play ストア上の Nam Nghiem 様によるアプリケーション説明より: 当記事時点での更新日付表示は 2016-03-29)NO NFC? NO PROBLEM.
Radon uses sensors you already have, and everyone else has including Wi-Fi, Bluetooth and Ultrasound. It does everything automatically, so all you have to do is tap share. - 新しい Amazon Dash Button にマイクが残されている理由
(当ブログの記事より: 2016-12-22)旧 Button が iOS 端末でのセットアップ時に音声信号を利用するためにマイクロフォンを内蔵していたことは理解できます。では、なぜ BLE 通信を利用する新 Button にもマイクが残されているのでしょう?
使わない部品であれば製造コスト削減のためにも撤去するほうが合理的なはずです。まさか Amazon が何か良からぬことを企んでいるのでしょうか?
・ Amazon Dashからマイクが見つかる、これ盗聴器だろ - jisaka.blog.jp - 新ThinkPadではエラービープ音をAndroidアプリに聞かせるとエラー内容の特定が可能
(PC Watch 様サイトより: 2017-02-09)2017年モデルの新機能の1つとして、エラービープ音の進化が挙げられる。 これまでのPCのエラービープ音と言えば、長い音と短い音を組み合わせたモールス信号のようなもので、ユーザーはその音を聞いて、マニュアルと照らし合わせてエラーを特定するといった煩雑な作業が必要だった。
一方、2017年モデルでは、個別の音階を持ったエラー音でエラーコードを発信し、スマートフォン対応の「Lenovo PC Diagnostics」(リンク先は Android版)というアプリに聞かせると、エラーコードとともに、機種名、エラーの原因、タイムスタンプ、そしてモデル名やシリアルナンバーに至るまでを特定できるようになった。これによって管理の利便性を大幅に 向上させた。
事例では人間の可聴域を離れた超音波を利用するケースがしばしば見受けられます。実際、「超音波通信」は人気のあるキーワードですね。もっとも、かつて電話回線ごしの音響カプラや旧世代のファクシミリでの応酬に可聴音が用いられてきたように、使用する音域を決定づけるのは利用環境等の条件の組み合わせにすぎませんから、技術者にとって一番の関心事はあくまでも「音を媒体としてどのように情報をやりとりするか」という本質的な話題でしょう。
電磁波に比べ音波には伝送上の距離や効率により多くの制約があります。その一方で、法規制の影響がほぼ皆無であることに加え、機器に必要な I/F は音声入出力(役割によっては片方でよい)のみであり自由度が高いという大きな特長があります。このような事情に関心を持ち、近距離通信手段の選択肢のひとつとして「音」を利用するノウハウに触れておきたいと考えました。
そんなわけでここしばらく手元では Android デバイスと mbed マイコンをプラットフォームとしてそれぞれの環境で音(超音波を含む)による情報通信の実験を行ってきました。実践的な情報が比較的乏しい状況も相まって興味深い経験でしたが、全体のボリュームがやや大きいこともあり今後中身を整理しながら数回に分け順を追ってこのブログに記事を書きたいと考えています。
今回は予告をかねて試作の一部を紹介します。以下の二本の動画をご覧下さい。
次回は Android 環境での取り組みと実装まわりの話題を掲載する予定です。
雑記:最初の最初に試したこと 〜 所定の音に反応する機器
2004年ごろ、東京駅八重洲地下街にまだ存在していたアイディアグッズの店「王様のアイディア」で「リモコン発見器」というネーミングの商品を購入した。付属の笛を吹くと小さな本体が音と光で反応するというもの。
何度か使ってずっと忘れていたが今回ふと思い出しネットで探したところ現在も販売されていることを知った。音に関する予備知識がほとんどない状態なりに一連の取り組みの皮切りとしてこのデバイスを使って観察を試みた。
(旭電機化成株式会社様サイトより)
リモコンに装着し笛又は口笛を吹けばピッピッと音と光でリモコンがお知らせします。
特徴
よく使うリモコンに、付属テープで発信機をセット。
笛又は、口笛を吹けばピッピッと音と光でリモコンがお知らせします。
「本製品は、約1600〜2000ヘルツの音に反応するよう作られていますので、笛以外の音でも周波数が合えば反応します」
写真左:下の丸い圧電素子がスピーカーとマイクを兼ねておりメーカーへ尋ねたところ「特定の音域のみへの反応はフィルタ処理ではなく圧電素子の周波数特性によるもの」とのこと。
付属の笛・音楽キーボード・口笛を使い、反応する周波数帯を確認しながらこのデバイスを操作した様子。
動画:1分26秒 ※38秒あたりから耳に障る音が鳴るので音量に注意
使用アプリ: AudioUtil Spectrum Analyzer - play.google.com
以下は動画撮影後にあらためて採取した上記アプリのスクリーンショット。環境音も含まれるがもっとも振幅の大きい周波数成分が近いため三者の波形の周期は大体似ている。
(tanabe)